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日本のソフトウェアエンジニアは激務なのか?働き方改革とIT業界の現状

日本のソフトウェアエンジニアは本当に激務?働き方改革後の現状、IT業界の特徴、そして自分に合った企業の選び方を解説します。

October 26, 202510 min read
日本のソフトウェアエンジニアは激務なのか?働き方改革とIT業界の現状

日本のソフトウェアエンジニアは激務なのか?働き方改革とIT業界の現状

日本では長時間労働が問題視され、「過労死(karoshi)」という言葉まであります。そのため、外国人の間では「日本のソフトウェアエンジニアは激務だ」というイメージが定着しがちです。しかし、現在の日本でこのイメージはどこまで当てはまるのでしょうか。本稿では過去の労働環境や働き方改革の進展、IT業界の特徴を整理し、現代の日本でソフトウェアエンジニアとして働くことが本当に激務なのかを検証します。

過去の状況:長時間労働と休暇取得の低さ

日本の労働時間は1980年代までは欧米諸国と比べて極めて長かったことが指摘されており、この時期の長時間労働が「社会的 dumping」と批判された経緯もあります。その後、労働基準法改正などにより週40時間制が整備されると労働時間は徐々に減少しましたが、近年まで「定時後も会社に残って当たり前」「有給休暇はあっても消化しづらい」といった慣行が根強く残っていました。有給休暇の取得率は長く低迷し、育児休業を取得すると昇進に影響すると考える労働者も多かったのです。

働き方改革の推進

2010年代に入ってからは長時間労働への批判が高まり、大手広告会社の若手社員が長時間残業の末に命を落とす事件などが社会に衝撃を与えました。こうした背景のもと、政府は2018年に「働き方改革関連法」を施行し、残業時間の上限を設けるとともに有給休暇の取得を義務化するなど長時間労働是正と休暇取得促進のための制度を整えました。企業に対しては労働時間管理の徹底が求められ、違反企業には罰則が科されるようになっています。

現在の労働時間の実態

近年、日本の平均労働時間は長期的に減少しており、1980年代のように突出して長いとは言えない水準に近づいています。働き方改革後、多くの企業が「ノー残業デー」の実施や有給休暇取得の促進などに取り組んだ結果、残業時間の抑制と休暇取得率の改善が進みました。それでも、業種や企業によっては長時間労働が残っており、完全な解消には至っていません。

IT業界は激務なのか?

日本のソフトウェアエンジニアは、他業種と比べてどうでしょうか。日本のIT産業は「受託開発(SIer)」と「自社開発」に大別され、その文化や働き方が大きく異なります。

SIerと自社開発の違い

受託開発企業(SIer)は顧客のシステムを請負で開発するため、ウォーターフォール型のプロセスや階層的な下請け構造が一般的です。このモデルではドキュメント作成やクライアント折衝が重視され、エンジニアは納期に合わせて働くことが多いため、プロジェクトによっては残業が多くなる傾向があります。 一方、自社開発企業は自分たちの開発ライフサイクルを自分たちでコントロールできるため、比較的ワークライフバランスを重視できている企業が多い印象です。 日本のSIerと自社開発会社の違いについてより詳しく知りたい方はこちらの記事も参照して下さい。

IT業界での働き方の柔軟性

IT業界は比較的、欧米的な働き方が受け入れられやすい文化があります。著者の観測範囲では、過度なハードワークや理不尽な長時間労働を強いられる環境は年々少なくなっているように思います。 特に、多国籍な従業員を受け入れている企業ほど、その傾向は強く、旧日本的な働き方を強いられることに対し過度に心配することはないと思われます。

なぜ「日本は激務」という印象が残るのか

過去の長時間労働の記憶と改革の契機: 1980年代から1990年代の長時間労働や過労死などの悲惨な事件の記憶は、今でも日本の労働文化に影を落としています。特に、大手広告会社の若手社員が長時間残業の末に命を落とした過労死事件は社会に大きな衝撃を与え、労働環境の改善に向けた働き方改革の流れを加速させる契機となりました。 働き方改革の途上: 長時間労働の削減や休暇取得率向上は一定の成果を上げていますが、長時間労働が完全になくなったわけではなく、管理職への負担増加など改革の途上にある課題も残っています。 産業・企業による差: 労働時間や働き方は業界や企業規模によって大きく異なります。受託開発企業はクライアントの納期に左右されやすく、繁忙期は残業が増える傾向があります。一方、自社開発企業や外資系企業はリモートワークやフレックス制度を整備し、欧米的なワークライフバランスを重視する傾向が強いです。(もちろん企業ごとに文化は異なるため一概に断言することはできません)

結論:心配しすぎる必要はないが企業選びが重要

日本のソフトウェアエンジニアが激務かどうかは、時代背景や企業形態によって大きく変わります。2018年の働き方改革以降、残業時間には法的な上限が設けられ、平均的な労働時間は諸外国と比べて特筆して長いとは言えない水準まで近づいています。 もちろん企業によって差はありますが、特にIT業界では自社開発企業やグローバル企業を中心に、リモートワークやアジャイル開発といった欧米的な働き方が広がっています。長時間労働や過度なハードワークが日本のIT業界全体を支配しているという時代は過去のものになりつつあります。日本で働くことを検討しているソフトウェアエンジニアは、会社のビジネスモデル(受託開発か自社開発か)、働き方制度(リモートやフレックスの有無)などを十分に調査し、自分に合った企業を選ぶことが重要です。

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