エンジニアが知っておくべき日本のビジネスマナー:本当に必要なこと vs 古い慣習
「日本で働くなら、完璧なお辞儀や名刺交換のマナーを覚えないといけないの?」
日本での就職を考えているエンジニアの方から、よくこんな質問を受けます。確かに、日本の伝統的な企業(いわゆるJTC)には独特のルールが存在します。しかし、モダンなテック企業やスタートアップでは、その常識が大きく変わりつつあります。
この記事では、日本の開発現場で「本当に必要なマナー」と「実はもう気にしなくていい古い慣習」を、現役エンジニアの視点から解説します。
1. 実はもう気にしなくていい「古い慣習」
まずは、皆さんが心配しているかもしれないけれど、テック業界ではほとんど見かけなくなったルールから紹介しましょう。
❌ 毎日スーツを着る
エンジニアに関しては、9割以上の会社が私服勤務です。Tシャツにジーンズ、パーカーで全く問題ありません。ただし、清潔感は大切にしましょう。
❌ 完璧な敬語(Keigo)
もちろん、丁寧な言葉遣いは大切です。しかし、教科書通りの完璧な尊敬語・謙譲語を使いこなす必要はありません。「です・ます(Desu/Masu)」調の丁寧語が話せれば十分です。むしろ、過度に堅苦しい言葉遣いは、チームの心理的距離を広げてしまうこともあります。
❌ 上司より先に帰ってはいけない
「上司が残っているから帰れない」という文化は、モダンな企業ではほぼ絶滅しています。自分のタスクが終われば、"Otsukaresama desu"(お疲れ様です)と言ってサッと帰りましょう。
2. これだけは押さえたい「本当に必要なマナー」
一方で、どんなに自由な社風でも、日本で働く上で絶対に守るべき「信頼の基本」があります。
✅ 時間を守る(Punctuality)
これは日本社会全体のゴールデンルールです。 ミーティングの開始時間は「全員が揃って開始できる時間」を指します。5分前には準備を完了しておきましょう。もし遅れそうな場合は、分かった時点ですぐに連絡を入れるのが鉄則です。
✅ 報・連・相(Ho-Ren-So)
「報告(Hokoku)」「連絡(Renraku)」「相談(Sodan)」の略です。 日本のチーム開発では、個人の成果よりも「チーム全体の状況把握」が重視されます。
- 悪いニュースほど早く報告する
- 迷ったら自己判断せずに相談する これを心がけるだけで、あなたの評価はグッと上がります。
✅ 「空気を読む」より「合意形成(Nemawashi)」
「空気を読む(Reading the air)」のは難しいですが、その正体は事前の合意形成です。 会議でいきなり大きな提案をして驚かせるのではなく、事前にキーパーソンに「こういう提案をしようと思うのですが、どう思いますか?」と相談しておく。これがスムーズに物事を進めるコツです。
3. モダンな開発現場のコミュニケーション
最近の日本のテック企業では、Slackなどのチャットツールがコミュニケーションの中心です。ここにも独自のカルチャーがあります。
「さん(-San)」付け文化
社長や上司であっても、役職名ではなく「〇〇さん」と呼ぶ会社が増えています。これはフラットな関係性を築くための良い文化です。入社時に「なんて呼べばいいですか?」と聞いてみるのが良いでしょう。
絵文字スタンプ(Emoji Reactions)
Slackでの連絡に対して、"👀"(見ました)や"👍"(了解)、"🙏"(ありがとう)などのリアクションを返すことは、立派なコミュニケーションです。「読みましたよ」という合図を送ることで、相手を安心させることができます。
4. 結論:マナーの本質は「相手へのリスペクト」
日本のビジネスマナーは複雑に見えますが、その根底にあるのは**「相手に不快な思いをさせない」「スムーズに仕事を進める」**という、世界共通の思いやりです。
形式的なルールに縛られすぎる必要はありません。「チームメンバーと気持ちよく働きたい」という姿勢があれば、多少の失敗は笑顔で許されます。
恐れずに、日本のテック業界へ飛び込んでみてください!
